秋
はげしく荒れ狂う嵐が去った翌朝。砂のキャンバスに見事なオブジェが現れる。
小さな突起物が整然と、まるで意思をもった生きもののように林立する。
砂と風がつくりだした自然の芸術作品。それは、足跡を残すのがためらわれるほどに美しい風景だ。
夏
真昼の砂は白くきらめき、太陽の熱を照り返す。
だが、喧噪が静まる夕暮れには砂は茜色に染まり、やがて夕陽が沈むと、馬の背は夜のとばりに包まれる。
砂の上に大の字になると海風が心地よく、夜空に天の川が流れ、かいじょうには漁り火が数を増す。
静寂の中でまぶたを閉じれば、体は砂に同化してゆく。
春
砂丘の春は、海からやってくる。
暖まった海が、やわらかな風を送ってくるのだ。まだ時として強風が吹き荒れることはあっても、
砂嵐がおさまる頃、植物たちは葉を開き、いっせいに花をつけて砂丘を彩る。
花のじゅうたんは渚から始まり、内陸へと広がってゆく。
冬
音もなく降りつづける白い綿帽子。やがてそれは、砂の大地をおおいつくし、すべてが白銀の世界となる。
聞こえるのは、吹き渡る風の音と潮騒、そして、もの悲しく響くウミネコの声。
あらゆるものの生命をつかさどる大地も、深い冬の眠りにつく。
静かに横たわる雪の平原に、一陣の風が駆け抜けて、澄みきった青空に粉雪が舞っていた。